2020年に向けて: 膠着、虐待、希望

01.08.2020.

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World Tribune by John J. Metzler / December 31, 2019

ニューヨーク- クリスタルのスノーグローブを覗いて、来る年を予測し、予知し、予言する時が来たと洒落ているわけではなく、長期にわたる膠着した対立や新たな予測不可能な危機などと共に、新しい年に私たちを待っている政治的および安全保障の展望を解読するために、毎年恒例になっている2020年のビジョンが必要になる。

まずここに挙げるものは予想される中の幾つかである。

膠着状態の紛争

シリアの壊滅的な内戦は9年目になるが、いまだにいつ終わるか見通しも立たず、そこでは、数百万の罪のない人々を巻き込んだ、胃をかきまわされるような人道的地獄が続いている。普通の人が誰をも想像できないような血なまぐさい殺人ゾーンが2011年以降今も重く続いている。

国連安全保障理事会は超大国の様子見のせいで危険なほど行き詰まっており、そのため、苦しんでいるシリアの民間人のための人道的譲歩でさえ途中で挫折している。

数百万人の難民とその後の国内避難民を生み出しながら、ロシアの支援を受けたアサド政権に敵対するイスラム系ジハードテロリストグループが入り乱れながらシリアの未来のための戦いが続いている。

The Hong Kong demonstrators’ powerful statement will resonate in 2020 as well. / Video image

韓国でのにらみ合いの継続。国連の厳しい経済制裁にもかかわらず、平壌の指導部は非核化を依然として拒否している。米国の外交努力は、時を刻む時計を止めることはできたが、東アジアと米国に向けられた北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルによるはっきりとした現存する危機を解消することには失敗している。分割された朝鮮半島では、新年に新たな危機が発生する可能性がある。

忘れられたイエメン、リビアの闘争、アフガニスタンの荒廃、終結の兆しさえも見えないコンゴの紛争に、険しい人道的危機を見ることができる。

ベネズエラでは、かつては繁栄していた経済が今や急速に落ち込んでいるにもかかわらず、ニコラス・マドゥロの社会主義体制が持ちこたえている。400万人のベネズエラ難民がラテンアメリカ最大の人道的危機を生み出した。

ほとんどのラテンアメリカの国々と米国は民主的な反対派を支持しているが、マドゥロはキューバと中国に支持されている。

選挙

英国の最近の選挙では、保守党が労働党に対して圧倒的多数を獲得し勝利した。ボリス・ジョンソン首相は、1月の終わりに英国が欧州連合(EU)から正式に離脱するという。物議を醸してきたブレグジットに対して、議会は漸くはっきりとした進むべき道筋を明らかにしたかに見える。しかし、EU離脱の陶酔の先に、英国は特にスコットランドにおいて、深刻な政治的断層に直面することになる。

台湾では1月初旬に大統領選挙が行われる予定であるが、この民主的選挙戦の結果が、今後の中国本土との商業関係及び安全保障問題を決めることになる。

中国の攻撃的な行動と、香港の「一国二制度」の公式を厚かましくも無視することが、台湾の有権者に政治的自由を大切にし保護することを強烈に思い起こさせている。香港の「保証された」権利を踏みにじる北京のやり方に対して、どうして、台湾が中華人民共和国との取引で自らを危険にさらすだろうか? 現職の蔡英文大統領の再選はほぼ間違いないだろう。

米国では11月に演劇のような大統領選挙戦の中、投票が行なわれることになる。

政治的に四面楚歌状態のトランプ政権は、全てノーという反対勢力の存在にもかかわらず、アメリカ国民に素晴らしい経済的利益をもたらした。

記録的な低失業率、長い間失われた製造業の雇用の目覚しい増加、および活力に満ちた株式市場は、繁栄を示す成果の現れである。

昔一世を風靡したスローガン「経済こそが重要なのだ、愚か者 ! (It’s the Economy stupid!) 」は、分裂し孤立した民主党の反対勢力の目の前で投票結果によって裏付けられることだろう。

そして、カナダとメキシコとの、トランプ政権が、NAFTA(北米自由貿易協定:North American Free Trade Agreement)をアップグレードしたUSMCA(米国・メキシコ・カナダ自由貿易協定:United States–Mexico–Canada Agreement)の議会承認は、さらなる雇用と経済成長を保証することであろう。

新しい火種

トルコの独裁主義的な指導者タイイップ・エルドアンによる東地中海での力の誇示は、アンカラがトルコ南部地中海沿岸からリビアの北東海岸及ぶ排他的経済地域を形成するリビアとの協定に署名したことに始まる。 これは、ギリシャとキプロスにとっての海事利益に影響を与え、トルコ版の「地中海(Turkish Mare Nostrum)」をつくりだすかのように見える。

サヘル地域での聖戦主義者(Jihadi:ジハード) の復活; ナイジェリア北部からマリ、ニジェール、ブルキナファソまでのサハラ以南のアフリカの巨大な帯。ここでは、フランスの軍隊が、新聞の見出しを飾ることのない忘れ去られた戦争でイスラム過激派と戦っている。 この混乱の結果が、多くの移民が最終的にヨーロッパに向かうかを決めることになる。

イランの無能と腐敗という二つの厳しい現実が、イスラム政権に対する国内の反対勢力の拡大に火をつけている。幻滅した若者たちの激しい怒りは、2018年の民主化デモにつながり、最近では11月に1500人のデモ参加者が治安部隊に殺害された。この政治的な鍋は、新しい年には煮こぼれするかも知れない。

ワイルドカードへの希望

中国、キューバ、ビルマ、北朝鮮での人権侵害を傍観して見逃すことを拒絶しよう。

今こそ、中東のキリスト教徒に対する迫害を非難するべき時である。

アルゼンチンの新しいポピュリスト左翼のフェルナンデス政府が、何とか賢明であり続け、ペロン主義者の幻想からは一歩距離を置くように。

悲しいことに、不確実性がこれからの新しい10年の合言葉となりそうだ。

新年おめでとう!

ジョン・J・メッツラーは外交および防衛問題を扱う国連特派員である。彼は「分断されたダイナミズム、分離された国家の外交、ドイツ、韓国、中国」(2014年)の著者である。